昨年10月に行われた釜山国際映画祭でも大きな話題となった『蝶の眠り』が5月12日(土)より、角川シネマ新宿ほか全国公開となります。
女性小説家の心打たれる人生最終章。透き通るような美しさの中山美穂が文学的世界へ誘う
遺伝性アルツハイマーを患う主人公の女性作家役には、実に5年ぶりの映画主演作となる中山美穂。自身の年齢より年上の小説家の役を見事にこなし、ラストシーンの無垢で透き通るような表情は見る者の心を揺さぶる。韓国人留学生役には「コーヒープリンス1号店」のキム・ジェウク。幼少期に日本で生活していた経験を持ち、本作でも完璧な日本語での演技を披露している。
メガホンをとったのは、『子猫をお願い』で鮮烈な長編映画デビューを果たした韓国屈指の女性監督、チョン・ジェウン。本作では作家を主役に配し、彼女の住む家や書斎へのこだわり、日本文学をリスペクトした劇中劇など、斬新な表現方法で監督ならではの才能とセンスを印象付けている。また、初の劇映画音楽に取り組んだ新垣隆の叙情的な音楽、きめ細かく臨場感あふれる撮影が作品を一層儚く美しい“愛の記憶の物語”へと昇華させている。
柔らかい光と緑に包まれた2人の姿が美しい、本編映像が公開!
この度公開となった本編映像では、遺伝性アルツハイマーを患い、日々病の進行に怯えながらも最後の小説を書き続ける作家の涼子(中山美穂)と、その執筆作業を手伝う留学生のチャネ(キム・ジェウク)の微笑ましい姿が映し出されている。ひょんなことから涼子の雑事を任されることになったチャネ。飼い犬“トンボ”の散歩係から、手を痛めて執筆が進まない涼子に代わり原稿をパソコンに打ち込む作業を手伝っているうちに2人の距離は縮まっていく。また2人がくつろぐシーンでは本作のタイトルの意味も明かされている。「蝶の眠り」(=“ナビジャン”)とは韓国語で赤ちゃんのように両手を挙げて可愛く眠る姿を比喩した言葉。純粋なチャネの想いが滲みだす優しい言葉に、病気や年齢の差など気にもしない彼のまっすぐな愛情が伝わってくる。
涼子の家となる緑に囲まれた特徴的な邸宅は、建築家の阿部勤氏が実際に住む邸宅でありながら名建築として世界的に有名な「中心のある家」。韓国で建築ドキュメンタリー映画も手掛けるチョン・ジェウン監督ならではの視点で惹かれあう2人の姿と建築美を、淡い光が印象的な映像で切り取っている。思わずため息がこぼれてしまいそうなほどの美しさを堪能できる映像に期待してほしい。
【STORY】50代でありながらも美しく、若い読者にも根強いファンを持つ、売れっ子の女流小説家・松村涼子(中山美穂)。作家として成功し、満ち足りた生活を送る涼子だったが、遺伝性のアルツハイマーに侵されていることを知り、人生の終焉に向き合うことを余儀なくされる。“魂の死”を迎える前に、小説を書く以外に何かをやり遂げようと、大学で講師を務め始めた涼子。ある日、大学近くの居酒屋で、韓国人の留学生チャネ(キム・ジェウク)と出会い、ひょんなことから涼子の執筆活動を手伝うことになる。作業を進めるうち、現実と小説の世界は混沌として交差して行き、二人も徐々に惹かれあっていくのだった。しかしアルツハイマーは容赦なく進行していく。愛と不安と苛立ちの中、涼子はチャネとの関係を精算しようと決意するのだが、その思いはチャネには受け入れがたく、二人の気持ちはすれ違っていく…。
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