2017年初演と同時に韓国内で興行旋風を巻き起こしたミュージカル『狂炎ソナタ』(読み:カンヨムソナタ)。
『狂炎ソナタ』は、殺人を通して得るインスピレーションで世の中にない美しい音楽を完成させていく狂気的な作曲家“J”と、自身の成功のためJを破滅に導くクラシック界の著名な教授“K”、Jの音楽的ミューズであり幼馴染で、生まれつき天才的才能を持った作曲家“S”の3人の関係が鬱々とした世界観の中で展開されていく物語となっている。
今回日本では初となる公演は、11月15日(木)~18日(日)大阪、11月22日(木)~25日(日)東京で行われ、“J”役にはリョウク(SUPER JUNIOR)とシン・ウォンホ(CROSS GENE)、“S”役にはKEN(VIXX)、若手俳優キム・ジチョル、“K”役にはベテラン俳優イ・ジフン、イ・ソングンがキャスティングされた。11月24日(土)には韓国初演当時のオリジナルキャストであるパク・ハングン、キム・ジチョル、イ・ソングンの公演も行われた。
11月23日(金・祝)の15:00回では、“J”役をシン・ウォンホ(CROSS GENE)、“S”役をKEN(VIXX)、“K”役をイ・ジフンが演じた。
多くのドラマに出演しているが、意外にもミュージカル初挑戦というシンが演じたのは、良い作品を作ろうと苦悩する過程で、次第に良からぬ方向へ向かってしまう青年作曲家という難しい役どころ“J”。この役でシンは、心の闇と、そんな自分の罪を憎む光の部分とを上手く歌い分け、新たな境地を開き、ミュージカル俳優としての可能性を感じさせた。
KENは“J”の闇の中の一筋の光ともいえる親友“S”。清らかな心を、持ち前の美しい歌声で表現し、鬱々とした世界の中、唯一の清涼剤となり、“J”を見守る姿がとても良く伝わり、KENにぴったりの役柄だと感じた。
ミュージカル俳優として第一線で活躍するイ・ジフンは、言うまでもなくその実力で悪意の教授“K”を演じ切り、2人の若者に毒々しい歌声を注いだ。悪役“K”になりきった圧巻の歌声と演技力は見応えあり、このミュージカル作品に深みを出している。
そして最大の見どころは、ラストシーン。
シンとKENの2人は、劇中でピアノ演奏も披露していたが、最後の曲『君と僕』では二重奏で2人の友情を表すかのような美しいメロディを奏でる。
このシーンはぜひ観てもらいたい。
最後のカーテンコールでは、3人ががっちりと抱き合い、お互いの演技を称え合っていた。
派手なダンスや賑やかな楽曲があるミュージカルではない分、俳優の内面から滲み出る表現力がひしひしと感じられるこの作品。少し玄人向けかもしれないが、韓国ミュージカルファンには一見の価値ありの見ごたえ十分な作品となっている。
ぜひまた日本での再演を期待したい。
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