6月8日、渋谷伝承ホールで新たなスタートを切ったONEWE。これまでも日本でフリーライブを重ねてきた彼らだが、この日はインディーズデビューシングル「Reminisce about All」発売の翌日ということもあって、メンバーの緊張とファンの期待は最高潮だった。
照明が落ち、「ピアスが僕をぶつように」の前奏が流れる。幻想的な雰囲気の中、ステージにメンバーの姿が浮かび上がり、ファンから一気に歓声が上がった。繊細な音色で前奏を奏であげるのはキーボードのドンミョン。これまでフリーライブで演奏してきた「ピアスが僕をぶつように」のロックサウンドとは全く違った演出に会場も息を呑む。
しっとりとした前奏が終わり、本格的に一曲目の「ピアスが僕をぶつように」がスタート。
待望の日本語バージョンはこの日が初披露。前日の6月7日に発売されたインディーズデビューシングルに収録されている日本語バージョンのパフォーマンスを心待ちにしていたファンは多い。この曲の最大の見所はサビのヘッドバンギングと、カンヒョンのギターサウンドである。この日も会場を巻き込む圧巻のパフォーマンスで一曲目からONEWE“色”を魅せつけた。
続く2曲目も力強いサウンドと歌声に、ヘッドバンギングも欠かせないアツいステージを披露。どんなに激しいパフォーマンスにもブレない歌声のハーモニーに圧倒される。1曲目よりもキアの奏でるベースが楽曲に映え重厚感があり、彼らがこれから躍進していく礎となるステージであることを感じさせる。曲の後半ではヨンフンが圧巻のロングトーンを披露。超大型新人バンドONEWEのボーカリストの実力を惜しむことなく発揮した。
「みなさんこんにちは!今はこんばんはですか!?」と愉快に始まった最初のトーク。「僕たちはONEWEです!」「遂にこの日がやって来ましたね!」「僕たちもドキドキしながら準備しました!」。パフォーマンス中に見せるクールでカリスマ性溢れる姿と違って、トークになると年相応の少年っぽさや、緊張の解けた等身大の彼らを見ることができた。
今回の公演に対する意気込みについて、メンバーが口を揃えたのは「燃え尽きる」という言葉。それに対しドンミョンが「僕の父は消防士なので本当に燃えたら駆けつけますよ」とジョークを飛ばし、会場は笑いの渦に包まれた。リーダーでボーカルのヨンフンは、開演前の2時間は会話も控えて喉を休めたというプロ意識の高さが伺えるエピソードを披露しファンも驚いた。「今日はONEWEにとって歴史的な一日になると思います」「本当に一生懸命準備しました」。日本活動や音楽に対する彼らの誠実さも垣間見えたトークだった。
トーク後は一気に切り替え、再びカリスマ性を発揮。明るいアップテンポの楽曲を中心に披露し、「Actor」ではドンミョンがショルダーキーボードにチェンジしてファンとの距離がぐっと縮まった。「Actor」の次は初披露の「公私混同」日本語バージョン。可愛らしい振付が特徴のこの曲にファンも思わず体を揺らす。そして、メンバーの動きを真似る姿が微笑ましい。楽器を弾き、歌を歌うだけではなく、振付も取り入れて楽曲の本質を更に表現するところがONEWEの強みである。楽曲の完成度、演奏力・歌唱力、パフォーマンス全てにおいて精通しているのは彼らを取り巻く環境の根本に“K-POP”が存在しているからで、表現の多様性が日本のバンドとは異なるONEWEの“音楽性”が見られるステージであった。
続くトークでは「公私混同」の楽曲説明と共に、「公私混同」にちなんで“公私に最もギャップがあるメンバーは?”というトークテーマで進行された。「仕事中はリーダーシップのあるヨンフンだが、家に帰ると赤ちゃんのように全部世話をしてあげないといけない」、「ステージ上ではカリスマ溢れるセクシードラマーのハリンだが、メイクを落とすと可愛い」など、メンバーの素顔を知ることができるトーク内容に、ファンも楽しそうな表情を見せた。
様々な楽曲を披露する中で特にONEWEの“色”が見えるのはカバー曲である。どんなカバー曲もONEWEカラーになり、原曲を知っている分、彼らの本質が見えるステージになる。
既存の楽曲を自分たちのやりたいように、自由にアレンジするため、彼らのやりたいことがファンにもストレートに伝わる。「こうしたいんだ」「こうアレンジするんだ」「こう弾きたいんだ、歌いたいんだ」「こんな雰囲気を出したいんだ」。会場に集まるファンはそんな彼らの音楽性に共感し惹かれているのだと感じる。
カバー曲披露後のトークでは、カバー曲は主にキアとカンヒョンが編曲しているという話題に。キアがまず編曲し、その次にカンヒョンがギターパートを追加するそうだが、カンヒョンの作業に時間がかかるらしく「いつも遅くて、もどかしいです」とキア。それに対し「キアを感動させるため慎重に制作している」とカンヒョン。「これからも僕たちの“色”と“音楽”をお届けできるよう頑張ります」とこの話題を締めくくった。
トーク後はしっとりとしたバラードが続き、「Starlight」ではヨンフンとドンミョンの優しい歌声が会場を包み込んだ。幻想的な照明やバックスクリーンで雰囲気は更にアップし、会場全体が楽曲の世界観に酔いしれた。前日に発売したばかりのインディーズデビューシングルのタイトル曲「Reminisce about All」はこれまでのフリーライブで披露して来ただけあって完成度の高いステージだった。幸せそうに会場を見渡しながら歌い上げるヨンフンの
表情が印象的で、彼の息を吸う音も、声の震えも演出の一部になっていた。また、オレンジ色の照明やスクリーン映像が、インディーズデビューシングルのジャケット写真とマッチして、「Reminisce about All」の世界観が見事に表現され、歌詞が映像的に耳に入って来る。
会場のファンも歌の一語一語、楽器の一音一音を大切に聞いているようだった。
あっという間に時間が過ぎ、ミニライブも終盤に。今日の感想を話す場面では「ここまで来て下さってありがとうございます。ファンの皆さんの真心を感じることができで幸せでした。(カンヒョン)」「今日は雨が降っていて、僕は雨が降っているだけでも外に出るのが嫌なのに、皆さん来て下さってありがとうございます。本当に感謝しかありません。初めての日本単独公演忘れないで下さい。(ドンミョン)」「最近、小さな舞台・大きな舞台に立つ度皆さんにお会いしますが、その度にONEWEになれて良かった、歌を歌えて良かったと思えます。これからも良い曲を作っていきます。(キア)」「最後まで楽しんで下さってありがとうございます。これから披露する曲も頑張ります。(ハリン)」「今日は来て下さって本当にありがとうございます。そして準備して下さったスタッフの皆さんも本当にありがとうございます。皆さん大好きです。(ヨンフン)」と各々感謝の気持ちを伝えた。
メンバーがステージからはけた後すぐに会場からはアンコールが。まだまだONEWEの音楽を見たい、聞きたいというファンの心が一つになり大きなコールに包まれる会場。そして再び、ONEWEの登場に全ての観客が席から立ち上がりオールスタンディングで盛り上がった。本編で多くの楽曲を披露したが、力強いサウンドと鋭い歌声はアンコールでも健在。エネルギッシュなパフォーマンスに会場のボルテージは上がる一方。盛り上がりつつも公演の終わりを惜しむような雰囲気の中、本公演の幕は閉じた。