世界中で活躍する人気アイドルグループ“SUPER JUNIOR”のメンバーで、俳優としても大活躍のシウォンと、実力派女優イ・ユヨンの豪華カップル共演が話題の「ダーリンは危機一髪!」DVD-SET1&SET2、レンタルDVD Vol.1~18が、好評リリース中。
天才サギ師が刑事と結婚して、国会議員の補欠選に出馬する?と、聞いた時は、世にも奇妙な設定に「ないないない!」とツッコミを入れずにはいられなかったが、これがどうして面白い!
“じわり共感”の夫婦の愛!
主人公のジョングクは、サギ師ならではの巧妙な話術と知能で窮地をかわしていく様はもちろん、刑事の妻ミヨンの前ではしごく真っ当、純で正直な男になってしまうあたり、実に心くすぐる。多種多様な顔芸(表情筋が金メダル)で悩めるジョングクの心の内を映し出すシウォンの名演ぶりは、すでに絶賛されているとおり。が!本作の推しポイントは、そこのみあらず。サギ師だろうが、刑事だろうが、議員だろうが、重要ではない。これは、1組のカップルが本物の夫婦の愛を再生していく物語なのだ。つまり、“じわり共感”が笑いの根底に流れている。
顔芸封印したシウォン、リアルな夫婦のすれ違い
物語は、ジョングクの一目惚れから始まる。互いに意気投合してフォーリンラブ。あれよあれよとゴールインしたのはいいけれど、結婚は最終地なわけはない。妻が刑事だと初めて知ったジョングク、自分の職業を明かすこともできず、2年後。表向きは夫婦でも、ぎくしゃくした関係をもどかしく思うミヨンは、久々に2人で飲みながら、こう言うのだ。
「私たち、つらいことがあったら、慰め合ってきたわよね。2人で話しながらお酒を飲めば、楽になったわ。だから結婚した。でも、今は違う。一緒にいたら余計につらくなる」「ごめん」「責めてるんじゃなくて、話し合いたいの」…顔芸なしの、リアルな夫婦のすれ違い。何度も謝り、ついには「謝ってるだろ!」とキレかかるジョングクに対して、「以前は心から謝っているように聞こえたけど、今は『もういい、黙れ』に聞こえる」とミヨン…。こんなやり取り、どこかで聞いたような……あ、自分か?と、感じる人も少なくないはず。もちろん、ジョングクとてサギを働くことに罪悪感がないわけではない。だから、足を洗う決意もするのだが、なんの因果かヤミ金業者の女会長に脅迫され、ミヨンを守るため国会議員に出馬するハメになる。
選挙活動×サギ──特殊な状況が重なり合ったスリルと面白さ
そして始まる選挙活動。妻の内助は必須であり、ミヨンも渋々手伝うことに。これが、2人にとって“転機”となっていくのだ。たとえば、ともに市民のために戦いながら再び心を通わせていく過程には、【選挙カーの上でよろけたミヨンをジョングクが抱きとめる】なんていう“思わずドキドキ”なシーンもあり。慣れない遊説を終えてやや疲れ気味のミヨンをジョングクがいたわるやり取りなんて、じつにいい。「正直いうとね、ここ(選挙事務所)に来たくなかった。でも、来てみること。毎日一緒にいられるのがすごくうれしい」(ミヨン)。そう、大切なのは、同じ時間、同じ思いを共有すること。ささいなことでも話し合って、笑い合って、顔を見て食事をして。そんなミヨンの言葉に、ジョングクは、さらに彼女を守りたい!という“夫としての思い”を強くしていくのだ。そして、「(選挙に)落ちてもいいけど、諦めちゃダメ」とミヨンに言われ、腹をくくったジョングクの奮起たるや。やはり、男は女次第である。
そんなこんなで選挙戦のあれこれを通して、本来の正義感に目覚めていくジョングクだが、とりわけぐっときたシーンがある。ジョングクが、前国会議員で選挙指南者ジュミョン(名優キム・ウィソン)を前にして、飲みながら本心を語る場面だ。「5億ウォンのビルを20億と偽り、“あなたには特別10億で売る ”。いままでは、そんな嘘をつくと人は俺に笑いかけてくれた。いまは、俺が本音を言ったり、自分の考えや気持ちをそのまま伝えたら、みんな笑顔になったんです」。ここでふっと笑みを浮かべるジョングクの柔らかな表情がいい!「それで、国会議員になるのか?」「……役に立つ人。役に立つ人になりたい」。妻だけでなく、誰に対しても嘘偽りのない人間になりたい。その人たちの笑顔のために……って、夫として、政治家として、素敵じゃないか!こういったコメディ抜きの本音語りの場面に、本作の真髄はあり。選挙活動×サギという特殊な状況が重なり合ったスリルと面白さも加え、最後まで飽きさせない。ジョングクがどんな選択をし、ミヨンがどう判断していくか。秘密をかかえた夫婦の行方にご注目あれ。
文:ライター・編集者 高橋尚子