EXOのD.O.(ディオ ※本作では本名のド・ギョンスで出演)が、初の映画デビューを果たした映画『明日へ』。
本作は従業員が大型スーパーを長期間占領した07年の実際の事件をもとに細部を再構成し、労働者が置かれている過酷な状況を韓国で初めて映画化した話題作である。
この映画を手がけたプ・ジヨン監督に、韓流Mpostがインタビューしたものをお届けします。
監督から見た、俳優EXOのD.O.(ド・ギョンス)と初めて会った時の話や俳優としてどう思ったか、エンドロールのエンディング曲D.O.(ド・ギョンス)が歌う「叫び」についての秘話など語ってくれています。
Q:『明日へ』(原題:카트/英題:Cart)を見させていただきました。
07年の実際の事件をもとに作られた映画とお聞きしておりますが、なぜこのモチーフを映画にしようとお考えになったのでしょうか?
本作は実話をベースにした映画ですが、実話をそのまま映画化するのは厳しいので、映画化に伴いフィクションの部分を追加しました。本作は実際に起きた事件にインスパイアされていますし、2014、2015年もなお、非正規雇用の問題は続いています。そのため、例えば実際の労働現場で起きた事件や関連人物たちのインタビュー、ドキュメンタリーなどの資料を十分に反映して映画を作っています。しかし映画はひとつのエンターテイメントです。労働現場の声を1年以上かけて集約すると同時に、家族を描いた映画であり、女性たちが成長する物語として観客に楽しんでいただける作品になるよう、2つの側面を意識しながら映画作りを行いました。
Q:ソニ役のヨム・ジョンアさん、ベテランの女優のキム・ヨンエさん、ムン・ジョンヒさん、キム・ガンウさんなど脇も名優で固めていましたが、映画を作るときに、この女優さんや俳優さんで行きたいというイメージを描いて作ったのでしょうか?
その中で、新人でもあり現在トップアイドルのEXOのド・ギョンス(D.O.)も起用されました。キャスティングについてのお話を聞かせてください。
狙い通りにキャスティングできましたが、こんなに皆さんが引き受けてくれるとは思ってませんでした。オファーしてすぐに快諾していただけたのでむしろびっくりしました。キム・ヨンエさんは以前弁護士役を演じていて、やはり社会問題を扱った作品でしたので、女優としてのイメージを気にして断られてしまうかなと思いましたが、彼女は快諾してくれた上に「50代、60代になっても重要な役を演じられる機会が増えてほしい」と言っていました。
Q:EXOのド・ギョンス(D.O.)さんは、ベテランの中に入ってもとても自然な演技でとけ込んでいたように見えました。
監督から見た、俳優ド・ギョンスは、実際どうでしたか? 歌手としての一面と違うなぁと感じたところなどありましたか?
初めて会った際、彼の生い立ちや、歌手になるまでを聞く機会がありました。
彼が演じるテヨンのことを充分理解出来るだろうと感じ、彼と一緒に作品を作りたいと思いました。彼にはバイト経験もありますし、家が貧しかったこともあります。その経験を生かす事が出来ると考えました。
演技は初めてだったので、台詞を練習した際に聞いたところ、とても上手でした。早い上達に、彼の可能性を感じました。
Q:韓国映画の題名を『カート(카트)』にした理由は、ありますか?
邦題の『明日へ』は、また希望を含んだ題名だと思いますが、監督のタイトルの印象はどうですか?
希望が見える、いいタイトルだと思います。
Q:韓国で上映されて、事件の当事者からの反響などは、ありましたか?あったら教えてください。
彼らには映画を作る過程からいろいろと助けていただきました。完成後に見て頂いたところ、満足したという言葉もかけていただきました。何度も観て泣いた方も居たし、感謝の言葉もかけられました。
当初、映画を作る上での目標に掲げていた、「当事者をがっかりさせない」という目標はクリア出来たと思います。
Q:女性を中心にしたお話ですが、女性監督だからこそ描けた部分もあったと思いますが、一番の思い入れのある台詞は、ありますか?
「私たちの声を聞いてください」というところです。
Q:最後のエンドロールのエンディング曲「叫び」の歌詞がメッセージ性も高く、さらにD.O.さんの歌声と映画がうまくシンクロして、最後に心に染みる感じの仕上がりになっていると思いました。「映画は、(エンドロールが終わる)最後まで」と言いますが、エンディング曲へのこだわり、D.O.さんに歌ってもらった事のエピソードなどあたったら教えてください。
映画の途中に出てくる集会で歌うシーンの曲は私が歌詞を書いたオリジナル曲です。
当初からエンディングも歌詞のある曲で締めくくりたいというこだわりがありました。
D.O.が歌う予定は無かったのですが、オファーしたところ快くうけてくれました。
そこでエンディングも私が歌詞を書こうとしましたが、イマイチと言われてしまって、作詞家の方にお願いすることになりました。D.O.が歌う曲の歌詞を書きたかったのですが、残念ながら実現はしなかったですね(笑)。
Q:最後に、日本の皆さんにメッセージがあったら教えてください。
『カート』が『明日へ』というタイトルで日本で公開されます。いわゆるおばさんと言われるような人々が会社で不当な待遇を受けながらも、それに屈せず、同僚たちと力を合わせてその状況を乗り越えようとするヒューマンドラマです。家族の物語でもあり、女性の成長物語でもあります。この物語が皆さんの心に温かい感動として届けば幸いです。