恋愛映画の巨匠ホ・ジノ監督が“愛する人を初めて見る瞬間”を描いた温かなラブストーリー『二つの光』。ラブコメ女王のハン・ジミンと、アイドルグループZE:Aのメンバーで韓流のプリンスと名高いパク・ヒョンシクが共演したことでも話題のこの短編映画が、世界初のスクリーン上映として5月13日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開される。
この映画は、サムスン電子の視覚障害者支援VRアプリが題材となっており、30分という短い時間の中でも恋人、夫婦、親子といった愛の姿が、鮮やかに生き生きと描かれている。
2017年当初はオンラインで公開されたが、今回日本で世界初のスクリーン上映が実現することとなった。
この公開に先立ち、ホ・ジノ監督がオンラインでの合同インタビューに答えてくれた。
―ハン・ジミンさん、パク・ヒョンシクさんのとても感性あふれる、透明感あふれる演技が素晴らしかったのですが、このお二人をキャスティングした決め手は何だったんでしょうか?
ハン・ジミンさんは、私が作品を一度ご一緒してみたい俳優さんでしたし、とてもいい感性を持っていて、多彩な魅力がある俳優さんだと思っていました。この作品では主人公の明るい面と内面に悲しみをたたえているような面の両方を演技しなければならなかったんですが、それがジミンさんと合っていると思いました。
パク・ヒョンシクさんは、それまではテレビドラマでは拝見していましたが、実際に会ってみたら、本当に清らかな俳優さんでした。実は、ちょっとトゲトゲした、ギスギスしたようなところがあるんじゃないかと思っていたんですが、本当にとてもいいパワーを持っている清々しい俳優さんだったので、一緒に撮ることになりました。
―視覚障害を題材にした映画を、30分という短編映画にした理由はありますか?
最初にこの映画の依頼をいただいた時に、短編がいいという提案を受けました。そして私も当時、短編作品を作ってみたいと思っていましたので短編ということになったんですが、本当に久しぶりに楽しく作業ができました。
―心温まるほっこりする映画ですが、監督のいちばんのお気に入りのシーンはどこですか?
最後の辺りのシーンなんですけど、ジミンさんが「私が見える?」と聞くと、ヒョンシクさんが「よく見える」と答えるシーンが気に入っています。
―撮影エピソードで、印象に残っていることなどがあったら教えてください。
最初の撮影の時でした。視覚障害者の方たちは目の焦点が合わないので、片方の目が片方に寄ってしまう傾向がある方がいるんですけど、ハン・ジミンさんはその演技をしようと準備してきたんです。もちろん私が以前に「そういうケースがあるんだけどできるかな?」と話してはいたんですけど、簡単に片方の目だけを動かす演技なんて、準備期間がとても長いわけでもないので、できないのではないかと思っていたんですが、その演技をしたんです。ただ、その時悩んでしまいました。ハン・ジミンさんのかわいさが半減してしまうんじゃないかと思って(笑)。でもハン・ジミンさんは「私はやりたい」と言ってくれたので、そういう演技をすることになって、おかげでとてもリアルな感じが出せて、良かったと思います。
―エンディングの曲は、主演のパク・ヒョンシクさんが甘美な声で歌っていて、歌詞も心に響き、とてもしっくりしていて印象的でした。エンディング曲にもヒョンシクさんを抜擢したのはどのような理由からでしょうか?
以前『八月のクリスマス』の時はハン・ソッキュさんが歌を歌ってくれましたし、『春の日は過ぎゆく』では、映画の中には出てきませんが、ユ・ジテさんが歌ったOSTがありました。(ヒョンシクさんは)歌手なので、音楽監督が「エンディング曲を歌ってもらったら?」とアイディアを出してくれて、本人も「いいですね。ハン・ソッキュさんも歌って、ユ・ジテさんも歌ったので、僕も歌ってみます」と言って歌ってくれました。
―ハン・ジミンさん演じる視覚障害をもつスヨンの姿は本当にリアリティがあって、さすがの演技でしたが、監督からは今回の撮影前にどのようなアドバイスをなさったのでしょうか?
今回は短編映画でしたので、準備期間も短かったんです。ただ想像だけで演技ができるとは思えなかったので、実際に私は視覚障害者のご夫婦に事前にインタビューしました。そのご夫婦に連絡して、パク・ヒョンシクさんとハン・ジミンさんも交えて、たくさんお話をしたんですが、私が帰ったあとも二人はは残って、また別の日にもご夫婦に会って、二人はどうやって知り合ったのか、恋愛感情についてなど、たくさんお話をして、エピソードをたくさん聞いたことが、演技をする上で助けになったと思います。
―この作品では視力が悪くなっていくにしたがってパク・ヒョンシクさん演じるインスの瞳の方向が微妙に変わっていったように見えました。今回撮影していく中で、監督が感じた“俳優パク・ヒョンシク”の魅力はどのようなところでしょうか?
賢明な俳優さんだと思います。映画の経験は多くはありませんが、撮影しながら、俳優が撮影する姿勢、以前に私の映画で主人公を演じた俳優の方とも全く変わらない姿勢で臨んでくれました。とても才能豊かな俳優だと思いますし、実際に見ているだけで、気分を良くしてくれる、こちらまで清らかな気持ちにさせてくれる、そんな俳優だなと思いました。彼が現場でカメラの前に立つと、スタッフはみんな、男性のスタッフたちまでも、心が洗われるような、本当にいいエネルギーを持っている俳優です。
―この作品では障害を抱える人たちが自分の人生をとても生き生きと前向きに過ごす様子が描かれていましたが、監督がこの作品を通していちばん伝えたかったメッセージはどんなことでしょうか?
私が視覚障害者の方たちにインタビューしながら感じたのは、冗談もよく言いますし、とにかく明るかったんです。そういう姿が映画の中でもきちんと描けたらいいな、と思っていました。映画を観て、(視覚障碍者の方の)明るくポジティブな面をお見せできたらいいな、と思いました。
―オンライン公開で愛された映画が、日本で世界初のスクリーン上映になる感想をお聞かせください。
日本の劇場で公開されるという話を最初に聞いた時は、「いやぁ、世の中にはこんなこともあるんだな」と思うくらいうれしかったです。パク・ヒョンシクさんとは電話でお話できたんですが、「本当にこんなこともあるんですね」と、とても喜んでいましたし、ハン・ジミンさんにはメールで伝えたんですが、「とてもうれしい」と言っていました。韓国ではなく日本で劇場公開できて、とてもうれしいですし、あぁ~、うれしいですね(笑)。
―日本でこれからこの映画を観る方へメッセージをお願いします。
『二つの光』は、暗いだろうとか、とてもつらいだろうとか思われがちな視覚障害者の方が、明るくポジティブに生きている姿を描いた映画です。コロナのせいでとても憂鬱な状況の中、この映画を観ることで、日本の観客のみなさんにとって、少しでも癒しになってくれたらうれしいです。ありがとうございます。
―次回作の計画はありますか?
映画を準備しています。兄弟が登場する家族の物語になります。今年中には撮影に入る予定です。
―監督は中国でも映画を撮られていますが、日本で撮るとしたら、どのような作品をどのようなキャストで撮ってみたいですか?
実は以前から日本で何か作品を撮ってみたいと考えていました。日本には素晴らしい小説や原作がたくさんあると聞いていますので、そういったものを題材として何か映画を撮れたらいいなと思います。
そして日本にはいい俳優さんたちがたくさんいるので、一緒に撮ってみたい俳優さんたちも本当に多いです。
―監督が映画の世界に夢中になり、関わっていきたいと考えたのはいつ、どんなきっかけですか?
韓国映画アカデミーというところで映画を初めて学びました。そして卒業作品を作ることになって、作りながら、もともと怠け者の性格だった私が(笑)、その時にはすごく真面目に、マメな人間になったので、これだったら仕事にしてもいいかなと思いました。
漠然と映像に関する仕事をしたいと思って(韓国映画アカデミーに)入ったので、映画監督なれるという考えはありませんでした。
―毎回作品を撮る時にいちばんこだわっている部分はどんなところですか?
自分が今撮ろうとしている物語が現実に基づいているのか、現実性、蓋然性、そういったことを重要視しています。
―作品を撮影する過程では、思うようにうまく進まないこともあるかと思います。そんな時はどのようにして気分を変えて撮影に臨みますか?
確かに撮影現場はとても大変な部分がありますよね。寒かったり、なかなか眠ることができなかったりするんですけど、そういう時は、撮影現場がいちばん幸せなんだと思うようにしています。撮影している時は、早く休みたいと思うこともあるんですけど、後で振り返ってみたら、やはり撮影していた時がいちばん幸せだと思えるので、そんな風に気持ちを切り替えて、辛い状況でも乗り越えるようにしています。
―今後描いてみたい“愛のカタチ”は?
まだ具体的に決めてはいないんですが、恋愛映画が持っている面白さがあると思うんです。今回『二つの光』を撮った時も、本当に楽しく撮れましたし、僕の心の中で温めている、とても明るくて楽しい、そんな物語の恋愛映画を撮ってみたいと思っています。
―映画をはじめ、ドラマ、K-POPなど、韓国の芸術文化が世界で注目を浴びていますが、このような状況について、監督はどのように感じていますか?
’98年に『八月のクリスマス』を作って、その時に初めて日本に行ったんですけど、当時の韓国映画や音楽に寄せられる関心に比べて、今はさらに大きな関心が寄せられていると思います。その理由は、はっきりはわからないですけど、恐らく新しさもありながら普遍性も兼ね備えた面白さからくる関心なのではないかと思います。
(完)
映画『二つの光』は5月13日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国順次公開となる。
ぜひ劇場に足を運んで、癒されてほしい。
監督:ホ・ジノ『八月のクリスマス』『四月の雪』
出演:ハン・ジミン「私たちのブルース」「まぶしくて-私たちの輝く時間-」「知ってるワイフ」/パク・ヒョンシク「サウンドトラック#1」「力の強い女ト・ボンスン」「花郎<ファラン>」
韓国/韓国語/30分/カラー/5.1ch/原題:두개의 빛:릴루미노/英題:two lights:relumino/字幕翻訳:石井絹香/配給協力:ブリッジヘッド/配給・提供・宣伝:ハルシネマ
(C)Ho Film Co.,Ltd
公式サイト:https://two-lights.themedia.jp
公式Twitter:https://twitter.com/harucine1015/
公式Instagram:https://Instagram.com/harucine.official/
5月13日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ有楽町 ほか、全国順次公開!