韓国ドラマは、『愛の不時着』『梨泰院クラス』『イカゲーム』『D.P. -脱走兵追跡官-』などが世界中で話題になり、見応えたっぷりの大作が続々リリースされている。恐らくそういう作品と路線が違うが、気になる作品『中小企業物語』。
配役も、自分の身近にいそうな面々で、憧れるようなキュンとしたイケメンも登場しない。だからか、なおさら自分の周りにいそうなリアリティ感に引き込まれる。なかなか就職できない苦悩から始まり、そんな中やっと就職が決まる。従業員わずか数名の小さな貿易会社で夢にまで見た新生活が始まり、やっと決まった会社での日々は、夢に描いていたような新入社員と違い、雇用契約書もいい加減で、常にパワハラやセクハラが普通にあり、その中で日々起こる身近な出来事が描かれている。クスっと笑えるものだったり、これはひどい!と理不尽な立場に立たされている主人公を応援したくなったり、自分もその会社のデスクにいるような感覚になり、主人公の同僚になった感覚で一緒に愚痴を言いそうになるような身近に感じる短編社会風刺のドラマである。
社会風刺ドラマといえば『ミセン-未生-』が代表作の一つだと思うが、『ミセン-未生-』は、幼いころから囲碁しかやってこなかった主人公が、父の死をきっかけに貧困家庭で育ったため、夢を諦め26歳の時にコネで一流貿易会社のインターンとして働くことになる。正規社員でない主人公が格差社会の中で日々奮闘していく姿が共感を呼び、契約社員の実情、セクハラ、パワハラ問題など、サラリーマンの悲哀をリアルに描いて感動を与えた作品である。この主人公は、囲碁で培った記憶力と集中力、状況を囲碁に置き換え戦略を考える力があり、そこに一筋の光を見ながら、視聴者はそんな主人公を一緒に応援した。
一方、この『中小企業物語』も、格差社会・パワハラ・セクハラを題材に、等身大の若者を主人公に据え、身近な問題としている作品という点では同様だが、『ミセン-未生-』と一味違うのが主人公チュンボムが、本当に平凡で、何か際立った取り柄があるわけでもない青年だというところ。どこにでもいそうな青年だというところが最大なポイントなのである。恐らく「こういう人、絶対いる」と思えるような、何にも突出していない人物像を主人公にしているところが、作品にリアリティさを出している。
一度は辞めたものの、ほかに仕事もなくまた再雇用してもらうも、相変わらず流されながら日々を過ごしていく。そんなあり得そうな日々が身近に感じられ、共感を生むのであろう。その、日々起こるちょっとしたエッセンスに視点を置いているところに、この作品の面白さがある。そしてチュンボムも、流されながら、それでも生きていく術を身に付けていく。
そしてシーズン2の後半には、チュンボムの後輩が入社する。Vログのライバーでもあり、これが今を象徴する“インフルエンサー”で、新しい感覚の持ち主の入社である。古い体質の社長や古くからの社員との相関が、これもまた面白いし、あり得そうな展開に思わずクスっと笑ってしまう。
『中小企業物語』は、韓国の中小企業の現実を元にした細かなリアリティを散りばめてコミカルに描き、イケメンなし、胸キュンなしだけど笑えてクセになる、これまでになかった新感覚コメディドラマとして韓国で爆発的な支持を得ている。人気YouTuberのパニボトルが演出した低予算ウェブドラマから始まった本ドラマは、韓国で2021年1月にシーズン1が公開されると総再生回数5,300万回以上を記録し大ヒット。また、韓国のウェブドラマとして初めて「2022 カンヌ国際シリーズフェスティバル」に正式招待されるなど韓国だけでなく世界からも注目を集めている作品である。
『中小企業物語』は、月額動画配信サービス「WATCHA(ウォッチャ)」にて、シーズン1~4が好評配信中、6月22日からはシーズン5も独占配信開始となっている。
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