FTISLANDが9月1日、千葉県・幕張メッセ 幕張イベントホールで『2019 FTISLAND JAPAN ENCORE LIVE -ARIGATO-』ファイナル公演を行った。これは、4月4日から5月5日まで開催された13本の全国ツアー『FTISLAND JAPAN LIVE TOUR 2019 -FIVE TREASURES-』のアンコールライブで、グランキューブ大阪と幕張メッセイベントホールで計4公演が行われたが、かねてから“入隊前最後”と謳われていたラストライブということもあり、全公演が即日でソールドアウトした。
『FIVE TREASURES』ツアーから約4ヵ月空いてのアンコール。基本構成は変わっていないが、約半数の曲が入れ替えられ、初パフォーマンス曲や、日韓でこれからリリースされる新曲もファンへのプレゼントとして披露された。ダブルアンコールを含めて24曲、来年5月に日本メジャーデビュー10周年を迎えるFTISLANDの歴史を総括するようなセットリストを全身全霊でプレイした4人のメンバーたち。最後は、9月30日に入隊が決まったボーカルのイ・ホンギが「10年間、ありがとう!行ってきます!」と笑顔でファンに別れを告げた。
ソン・スンヒョン(G&Vo)、イ・ジェジン(B&Vo)、チェ・ミンファン(Dr)がポジションに着くと、イ・ホンギ(Vo)の「いこーか!」という号令で火花が上がり、疾走感あふれる「God Bless You」でライブは幕開け。バンドはスタートから全開。ファンも黄色のライトを振り、総立ちで迎え撃つ。『FIVE TREASURES』ツアーで本編ラストを飾った曲をオープニングに持ってきたのも憎い演出だ。早くも一体になった会場はホンギに煽られ、彼の「Singing!」という言葉でコーラスを重ね、シングアロングを発する。
「いよいよ今日(ファイナル)が来ました。プレゼントも用意しています。まず、アルバム『EVERLASTING』でジェジンと一緒に作った曲をライブで初めてやります」とホンギが言って、ジェジンのセクシーなベースがうねる「IF U WANT」を初パフォーマンス。アウトロからスンヒョンの印象的なギターリフへつながり、そのまま「TOP SECRET」に突入。この2曲は、アンコールライブのために用意された曲だ。続く「シアワセオリー」、そして「みんなの声もらうぞ!」という声でファンが一斉に歌い出すシングアロングが美しい「AQUA」というFT流Jロックで一体感を高めた。
「もうちょっと狂っていけるのか?ソリジロー(叫べ)!」という煽りで、韓国でアイドルからロックバンドへの脱皮を改めて認知させたFT流ハードロック曲「Take Me Now」と「PRAY」でシャウト。韓国語で歌うホンギはまた別の表情を見せてくれるし、一層熱のこもったそのボーカルに併せて歌うファンの熱量も上がる。
「パンツまでビショビショだー!」と、MCで笑うホンギ。「来年、俺ら日本デビュー10周年なんですけれど、来年はライブができないので、季節をテーマに今までの俺らの曲でコーナーを構成しました。アンコールライブといっても“FTはきっと違うことする”って思ってるでしょ?同じだとみんながスネると思ってツアーと別の曲を用意しました。改めていい曲がいっぱいあると思ったし、これからもいい曲を作りたいなと思いました」と、ツアーでは“四季”をイメージする曲のアコースティックアレンジで構成したメドレーパートは、バンドセットで春=「Primavera」、夏=「Let it go!」、梅雨=「So today…」、秋=「I believe myself」、冬=「Winter’s Night」と全曲を入れ替え再構成してくれた。
後半戦は、「歌っていると幸せな気持ちになれる」という2曲から。「Golden」ではファンの歌声を全身で受け止めて歌うと、ホンギは「サイコー!」と満面の笑顔を見せた。
「あー、今日で最後か!でも永遠の最後じゃない。戻ってきても変わらないから、心配しないで。待ってる時間も寂しくないようにいろいろなプレゼントも用意してる。目標もできたんです。日本でもそうだけど、韓国でも男性ファンが増えているので、軍隊の仲間を100人ずつライブに誘おうって」と笑顔で話すホンギだったが、「実は、ライブのために日本に着いたときに入隊日の知らせが来て、見た瞬間、力が抜けました。用意していたものがたくさんあるのに、見せられなくなってすみません」と、精神的に辛い中でのライブであったことを正直に話してくれた。
「寂しいけれど、待ってる間のプレゼントも用意してます。次の曲もプレゼントで、来年の日本メジャーデビュー10周年のための新曲「Sunrise Yellow」です。俺らの色はイエローでしょ?これからREEDOMのようにFTISLANDのライブの定番曲になります!そして、今日のライブがPVになります!」と紹介して、爽やかなポップチューンを初披露。軽快なリズムに乗って思わずジャンプをしてしまう曲だ。新曲の後は、FTISLANDのライブテッパン曲で固め、FTISLANDのライブの魔法にひたすら踊らされて本編の幕を閉じた。
だんだんと大きくなるFTISLANDコールに迎えられて、メンバー4人が登場。「あと2曲で終わるのが、本当に寂しいけれど、無事に行ってくるから!」と言うホンギに、会場から大きな拍手が沸き起こる。「“俺ららしさを忘れない”って約束します。今年は大変なこともあったし、良いこともあった1年だったけど、何があっても俺らは俺ら式で行くしかない。俺は自分の声を守って、メンバーは楽器を忘れず、みんなは俺らのことを忘れないって約束しよう!ワガママだけど、音楽に対しては真面目だよ。俺らはどんどん上手くなるから。信じてください」と、真剣に語りかける。そして「待ってる間は後輩バンドのライブに遊びに行ってもいいけど、好きになっちゃダメ!」と笑わせると、「今から歌う曲は、これから出る韓国の新曲。今言ったように、お互い自分自身を忘れずに人生を進もうって曲。韓国でのライブでみんなに歌ってもらったコーラスをCDに入れたんです。日本のみんなの声でも一緒に歌いたい」と9月9日に韓国でリリースされるミニアルバム『ZAPPING』収録曲の「Don’t lose yourself」を公開。柔らかなホンギの声が会場を包み、徐々に強くなっていく歌声にファンが歌う大きなコーラスの声が混ざり合う。ファンと一緒に作る上げる曲に、ホンギも満足そうに「Thank You!」と歌いながら感謝を伝えた。
「日本メジャーデビュー10年の節目にどっかに行くけれど、帰って来てからが俺らの第二の人生。そこからが楽しみ。バンドで年をとりながら音楽をやるのが夢。男は、30代40代がカッコよくなるけど、音楽も同じ。楽しみです。10年間、ありがとうございました!行ってきます!」と元気よく感謝を伝えたが、すぐに後ろを向いてしまったのは、涙を見せないためだったのかもしれない。
彼らが伝えたい言葉が詰まった「アリガト」では、客席に向かってホンギが手を左右に大きく振ると、それに合わせて黄色い光が左右に揺れる。
「こんなわがままな性格でも 傍にいて欲しいから これからもずっと 支えてほしいから」という歌詞がいつもより染みてきて、グッとこみ上げるものがあった。
歌いながら「ありがとー!笑ってな!」と笑顔で締めくくったが、すぐにまた、大きな“アンコール”の声が上がる。
「泣くなよ。最後に笑顔になるためにこの曲やるわ」と言って雄叫びと共に「Stay what you are」を全力で、笑顔で歌ってくれたホンギ。やり切った顔で、センターに4人が並び手を繋いでおじぎをすると、スンヒョンが「皆さんのおかげで、今日、幸せでした」と言って、ホンギはファンを讃える拍手を送った。
メンバーたちがハケた後に、ジェジンがひとりステージに残ると、「『アリガト』のとき、10年間の思い出が甦りました。僕はもうすぐソロで会えるけど、FTISLANDは今日でちょっと休憩。寂しいですね。この景色を思い出して、辛い時、頑張ります」と言うと、オフマイクで恒例の「みんなー、ありがとー!」と叫ぶと、会場のファンから「ありがとー!」という大きな声に乗せた感謝の気持ちが返ってきた。
10代で日本でのライブ活動を始めたFTISLAND。あのころは日本語もできずに、演奏の実力もまだまだだった。しかし、日本メジャーデビュー以降の20代のほとんどを日本でのツアーを中心に活動して、毎年、アリーナでのライブができるライブバンドに成長した。もちろん、日本語もペラペラになり、“友だち”というファンに、何でも正直に話してきた。FTISLANDのライブは、どんな会場でも心の距離が近い。FTISLANDはファンを受け止め、ファンは彼らを受け止めてくれる。それに何といっても、3人の楽器隊のタイトな演奏にライブの申し子のようなホンギの歌声と統率力に踊らされる心地よさは病みつきになってしまうから。この素晴らしいライブも約2年間見られなくなってしまうが、ホンギが言っていた通り、その間、さまざまなプレゼントが用意されているという。その第一弾として、ベースのジェジンが10月9日にミニアルバム『scene.27』でソロデビューし、東名阪で『LEE JAE JIN (from FTISLAND) 1st Solo Mini Live Tour “Love Like The Films”』を開催。そして12月には、ホンギを欠いた3人の楽器隊がFTISLANDとして『2019 FNC KINGDOM -WINTER FOREST CAMP-』に参加。後輩たちとのコラボステージを見せてくれそうだ。2020年には、ジェジン、スンヒョン、ミンファンの3人も入隊を予定している。30代になって戻ってきた彼らはきっとまた、ワクワクするライブを見せてくれるに違いない。その時はいったい、どんな曲を持って帰って来てくれるのだろう?
取材・文/坂本ゆかり