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2024年8月8日18時00分 木曜日 【単独インタビュー】韓国映画『ニューノーマル』チョン・ボムシク監督~チェ・ジウのいる現場はよく回る!?ミンホ(SHINee)は気遣いのできる好青年、チョン・ドンウォンの演技にも太鼓判!「青春といえばパイナップルだ」

本国で驚異的な大ヒットを記録した『コンジアム』のチョン・ボムシク監督の最新作『ニューノーマル』が8月16日(金)より新宿ピカデリーほかにて全国公開となる。本作は、絡み合う奇妙な運命が日常を一転させ、予測不可能な事態を巻き起こす体験型スリラーで、チェ・ジウ7年ぶりのスクリーン復帰作となり、共演にミンホ(SHINee)、P.O(Block B)ら豪華キャストを迎えたことでも話題となっている。
これまでとは全く異なるイメージのチェ・ジウをはじめとした、ユニークで精巧なキャラクターたちを生み出したチョン・ボムシク監督が、6月某日、オンラインにて韓流Mpost単独インタビューに答えてくれた。

【単独インタビュー】韓国映画『ニューノーマル』チョン・ボムシク監督

―この作品を作るにあたって“ケビン・ベーコンの6段階の法則”から、キャラクターを6人に設定したと伺いましたが、6人のキャラクターを作る際に工夫した点や苦労した部分などありますか?
『ニューノーマル』の物語についてきちんと説明するためには、既存のスリラー映画とは少し違った方法論で書かなければなりませんでした。大抵の作品の主人公たちは、成長してきた背景や、家族関係、友人関係、幼い時にはこんな経験をした、こういうトラウマがあったなどの情報が提供されて、観客のみなさんはそれを受け入れて、「ああ、こういう人がいるんだ」「こういう人が身近にいるかもしれない」というような受け入れ方をすると思います。そのように情報を提供した上で物語が進んでいく作品が多いと思うんですが、『ニューノーマル』の主人公たちは、私たちが道端ですれ違うような人たちくらいの情報だけで、映画が始まります。そのくらいの情報提供でスタートしていくので、この人は知らない人だけど、もしかしたらこういう状況なのかもしれない、こういう事件があるのかもしれないということを観客の方に感じ取ってもらって、そしてまたほかの登場人物ともこういう関係性があるのではないかということを類推して考えながら映画を観てほしいという狙いがあって、このような構成にしました。
ですから、映画を観ながら観客が推測できる直接的なつながりと間接的なつながりを、できるだけ日常みたいに受け入れられるように、精巧に設定することに苦心しました。

―猟奇的な殺人者とは真逆のイメージのチェ・ジウさんが演じたからこその恐怖を感じましたが、監督から見たチェ・ジウさんは、どんな俳優でしたか?撮影中のエピソードなどがありましたら、教えてください。
チェ・ジウさんとは、ヒョンジョン役についていろいろ話し合いながらキャラクターにアプローチしました。
普段のチェ・ジウさんは、明るくポジティブでありながら、気さくな性格です。普通のスターなら、「自分はスターだ」という雰囲気を醸し出していることが多いんですが、チェ・ジウさんはスターなのに、全くそういう雰囲気ではないんです。自分の撮影分が終わると、静かに待機場所のイスに座ってじっとしていて、話もほとんどしないで、話すとしても本当に聞こえないくらいの小さな声で静かに話すくらいです。でも不思議なことに、チェ・ジウさんが来ると、なぜか現場がよく回るんです。普通スターの方が来たりすると、みんな委縮してしまったりするものなんですが、チェ・ジウさんがいる日は、いるのかいないのかもわからないくらい、隅のほうのイスに黙ってじっと座っているだけで、その理由はいまだにわかりませんが、全てのスタッフがチャッチャッチャッチャと、言葉もなく一生懸命働いてくれるんです。なので「大変な撮影がある時は、チェ・ジウさんがいてくれたらもっと早く、簡単に撮影ができるのに」と冗談を言った記憶があります(笑)。

―SHINeeのチェ・ミンホさんは、日本でも人気のアイドルで、監督も初めて会った時から魅力を感じたとおっしゃっていましたが、撮影してから印象は変わりましたか?
また、コーラから松の芽に飲み物を変えたそうですが、チェ・ミンホさんのどんなところから、飲み物を変えようと思ったのでしょうか?
実際に初めて会った時に、とてもイケメンでマナーも良く、話していても本当に好青年で、その印象はずっとそのままでした。
現場でのエピソードをひとつお話しすると、演出部のミスがあって、ミンホさんが飲み物の缶を持った状態でその場面を撮らなければならないのに、演出部が飲み物の缶を渡すのを忘れてしまったんです。私もその時はその状況に気付いていなかったんですが、マイクが付いていて、イヤホン越しに偶然にミンホさんが、静かに演出部の方を呼んで話しているのが聞こえました。「今、監督がOKと言ってくださったんですが、この飲み物の缶を準備していなかったので、つながらなくなってしまいます。でも監督はつながりをとても重要視されると思いますので、ゴミ箱をひとつ準備してくだされば、次のシーンとつながるように、私がその缶を捨てたという演技をします」と。それを聞いた時に、これは明らかに演出部のミスなのに、そのミスもかばってくれて、しかも映画のシーンのつながりまで考えてくれる俳優さんはそんなに多くいないので、ミンホさんは本当にスマートで、気遣いができる人だな、最初に抱いたイメージそのままの好青年だな、と思いました。
飲み物については、ミンホさんのようにイケメンで魅力的な人に彼女がいないのは非現実的だと感じられたので、トレンドに流されない、今時の若者らしくない真面目なキャラクターを持たせたいと思い、“松の芽”に変えました。

―Block BのP.O(ピョ・ジフン)さんの‘無職’のニートもすごくハマっていて、監督自身も撮影中、笑いをこらえていたとおっしゃっていましたが、監督が特に気に入っているシーンはどこですか?
P.Oがトイレで、隣の部屋のキャビンアテンダントがシャワーを浴びながら歌う『ロリン (Rollin’)』を小声で歌いながら踊るシーンでは、笑いをこらえるのに苦労しました。
そして自分だけの妄想の中で、デュエットで『ロリン (Rollin’)』を歌いながらバスルームに向かい、リズムに乗るP.O.の後ろ姿がとても好きです。

―イ・ユミさんに関しては、「演技をしているのではなく、その瞬間を生きている」とおっしゃっていましたが、実際のイ・ユミさんはどんな人物なのでしょうか?特にここがすごい、と思ったシーンはどこですか?
普段のイ・ユミさんはとても明るい性格です。いつもニコニコ笑っています。
エレベーターのシーンは暑い夏に撮影されたのですが、サウンドの問題でエアコンも切ったまま撮影をしました。 イ・ユミさんはこれまでの作品でこのようなアクションを演じたことがなかったので、私が現場で、即興で殺陣を組み、彼女と何度か練習して撮影に臨んだのですが、(ネタバレのため詳しくは言えませんが)姿勢と表情、最後に流れる涙まで、シナリオにないものさえも本当に見事に表現してくれました。本当にすごい俳優さんだと思います。

―ハ・ダインさんの演じたヨンジンがひたすらパイナップルを食べていましたが、パイナップルにした特別な理由があるのでしょうか?
ヨンジンはいつも賞味期限切れのパイナップルの缶詰を食べています。その設定は、“青春”といえば思い浮かぶ映画、『恋する惑星』(1994)へのオマージュです。
私たちが調べてみたところ、コンビニでアルバイトをする人たちの多くは、コンビニで捨てられる賞味期限が過ぎた食べ物を実際に持ち帰って食べていたんです。それはちょっと心が痛むような状況だなと思いました。じゃあヨンジンが持ち帰って食べるなら何を食べるかなと考えて、キムパ(韓国のり巻き)とかパンとかが思い浮かびました。でもそういうものを食べているよりは何かちょっと象徴的なものを食べるのがいいと思って、ふと思い浮かんだのが、賞味期限が過ぎたパイナップルを食べるシーンがあった、ウォン・カーウァイ監督の『恋する惑星』という映画です。それで、「パイナップルにしよう」「青春といえばパイナップルだ」となって、パイナップルを食べることになりました。
これには個人的に面白いエピソードもあって、実は私の家の冷蔵庫に、撮影で残ったパイナップルの缶詰がずっとあったんです。ずっと入れっぱなしで1回も取り出さなかったんですが、ふと何日か前に夜中にちょっとお腹が空いて、「このパイナップルを食べてみようか」と思って、ヨンジンのように食べてみました。そうしたらその日が賞味期限で、その日というか、夜中の0時を過ぎていたので、もう賞味期限から数時間経ったものを私も数日前に食べました(笑)。

―スンジン役を演じたチョン・ドンウォンくんは、映画初出演ということですが、撮影中、感心したところや、今後期待するところなどがあったら教えてください。
ドンウォンくんは、今はもうすくすく育って青年になってしまったんですが、私が初めて会った時は、ほっぺもふっくらして、赤ちゃんのような、子供っぽいところがありました。ですからまだかわいい感じだったんですが、演技を一度もしたことがないので、事務所が演技の学校に通わせると言い出したんです。でも、私も大学で映画だけではなく、演劇も一緒に専攻していたので、演技の学校には行かせないでくださいと言いました。演技の学校に行ってしまうと、子役俳優の習慣的に覚えた典型的な演技を学ぶことになってしまうので、それよりも私と一緒に演技の練習をしようと。それでドンウォンくんを呼んで、演技の基礎をいくつか黒板に書きながら説明しました。その後、撮影現場で会ったんですが、初日の撮影はバス停のシーンで、その日に現場に来たドンウォンくんは「緊張している」と言いながら固いこわばった表情を見せていました。最初のカットはスンジンがバス停のベンチに座ってスマートフォンでYouTubeを見ながら笑うシーンでしたが、すごく緊張していたんです。ステージで歌う時は、子供の頃から圧倒するような感じでステージに立っていたのに。彼は私に近づいてきて「監督、このシーンではどれくらい笑えばいいんですか?少しだけ笑うんですか?もっとたくさん笑うんですか?」と質問してきたので、「笑える面白い動画を用意しておいたから、ドンウォンくんが笑いたいだけ笑えばいいよ」と言うと、彼は「僕が笑って、監督が気に入らなくて間違えたらどうしましょう?」と心配していたので、「そしたらもう一回撮り直せばいいよ。映画は間違えたらまた撮ればいい」と言うと、ドンウォンくんが本当に目を丸くして驚いているんです。なぜなら、ステージでは、途中で間違えてもそのまま歌い続けなければいけないので、映画の場合には撮り直すことができるというのを知って、その時に「そうか、映画はそれでいいんだ」と悟りが開いたようにドンウォンくんの目つきが変わりました。
その後はだいぶ安心して撮影に臨んでいて、逃げるシーンは、映像だけ観るとすごく緊迫しているシーンですし、こちらも胸を痛めるシーンなんですが、実はドンウォンくんはノリノリで盛り上がって、楽しく撮影をしていました。ただ撮影する側は大変だったんです。狭い空間の中を走って逃げるドンウォンくんの後をカメラが追いかけていって撮るというのは技術的にとても難しかったんですが、ドンウォンくんはまるで昔のメジャーリーグでベーブ・ルースがフェンス越えのホームランを打つと予言をしてホームランを打ったように、「このシーンは1回でOKを取ります」と言っていたんです。私は、かなり細かいところまで気遣って丁寧に撮るスタイルなので、ワンテイクでOKが出るということはあまりないんですけど、本当にワンテイクでOKを出してしまいました。
そういう成長のスピードを見て、ドンウォンくんのこの吸収力も、才能も持って生まれたものなんだなと思いましたので、これからも歌手としても、俳優としても大成すると直感しました。

―メインの6人以外にも濃いキャラクターがたくさんいましたが、監督自身がいちばん気に入っているキャラクターを教えてください。
何といっても、コンビニのモンスタークレーマー、イ・ムンシクさんの演技がとてもリアルで素晴らしかったと思います。

―作品の中の時間軸が行ったり来たりしていますが、どういった理由でこのような構成になったのでしょうか?
一般的な映画では、主人公の成長背景、家族関係、友人関係、恋人関係、そして特別に経験した事件やトラウマなど、様々な密かな情報が観客に提供されますが、『ニューノーマル』の主人公たちは、このような細かい情報をできるだけ排除して、私たちが道ですれ違う他人のように見せたかったです。
このように道ですれ違うような人物が経験する出来事を“非線形的な構成”で観せることで、私たちがどんなに“孤立”したまま生きていても、私たちはつながっており、互いに影響を与え合う存在であることを観客自ら考えながら感じてほしかったです。

―ロケ地にもとてもこだわったと思いますが、ロケ地での苦労話などあったら教えてください。
『Do The Right Thing』に出てくる塾のらせん階段と誘拐犯一味の巣窟を見つけるのは本当に難しかったです。

―この映画の中でいちばんこだわった音楽秘話を教えてください。
『Do The Right Thing』に使う音楽が思い浮かばず、本当に悩みました。ギジンの家の撮影に行く日の朝、移動中の車の中でプロコフィエフの『ピーターとオオカミ』を思い出し、すぐに聴いてみて「これだ!」と思ったのを覚えています。
また、『Dressed To Kill』で原作映画に使われたピノ・ドナッジオ音楽監督の『The Shower』の版権を買おうしていたのですが、使えませんでした。でも、ユンサン音楽監督がそれに匹敵する美しい音楽を作ってくれたので、後悔はありません。

―監督が特に気に入っているシーンはありますか?
各章のサスペンスシーンとエピローグのひとり飯のシーンが好きです。

―監督が最近感じているニューノーマルに変化したなと思う出来事などはありますか?
ニュースを見ていると、日々“ニューノーマル”を感じさせる恐ろしい、とんでもない事件・事故が続いていると思ってしまいます。

―監督の新作ということで、期待している日本のファンもたくさんいると思いますが、注目して観てほしい点などはありますか?
スリラー、ホラー映画の慣習にとらわれず、『ニューノーマル』が持つ新しい映画的なゲームを心開いてお楽しみください。

―こういったスリラー映画が大好きな人、反対に苦手な人もいると思いますが、これから映画を観る日本の観客に向けてメッセージをお願いします。
スリラーやホラーだからこうだろうと決めつけないでください。映画館までお越しいただいて6人の俳優の熱演と、ジャンルを超えて絡み合う面白いストーリーを存分に楽しんでいただければと思います。

『ニューノーマル』
監督・脚本:チョン・ボムシク『コンジアム』
出演:チェ・ジウ「冬のソナタ」、イ・ユミ「イカゲーム」、チェ・ミンホ(SHINee)「ザ・ファビュラス」、ピョ・ジフン(Block B)「ホテル・デルーナ」、ハ・ダイン、チョン・ドンウォン
2023年/韓国/韓国語5.1ch/113分
原題:뉴 노멀(英題:NEW NORMAL)/字幕翻訳:根本理恵
提供:AMGエンタテインメント/ストリームメディアコーポレーション/配給:AMGエンタテインメント
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公式サイト:https://newnormal-movie.jp/
2024年8月16日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開

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