キム・ジュンスは、K-POP界では歌もダンスもできるアイドルとして活躍していたのは言うまでもないが、その後ミュージカルという道も究め、オーケストラと共にライブをするという音楽性のより高いライブを実現し、2012年から10年間に渡り、バラードとミュージカルナンバーを中心とする新しい形式のコンサートを独自に進化させ、公演をしてきた。そして、国内外の観客から熱い賛辞を受けたジュンスが、2023年4月7日(金)、8日(土)、9日(日)の3日間に渡り、オーケストラとバンドと共に『2023 XIA The Best Ballad Spring Concert vol.3 In JAPAN』を横浜・ぴあアリーナMMで開催した。
「僕の歌を聴きたいという人がいたら、たとえそれがひとりになっても歌い続ける」というジュンスが、心を込めてファンに届ける究極に質の高い音楽が刻まれた時間となった。
この公演の最終日、4月9日(日)の模様をお届けします!
ジュンスのこのバラードコンサートはファンからバラコンと言われ、ミュージカルとバラード曲で構成されているが、やはりダンスも上手いので、ファンからのダンスも観たいという気持ちに応え、ダンスパートも用意されている。エンターテイナーとしてのジュンスが、全て楽しめるコンサートになっているから、贅沢なコンサートである。
最初は、ミュージカルセクション。
ジュンスは、韓国では17年ぶりの公演されたミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』の主演のトニー役を2月まで演じ、掛け合わせで公演していた『デスノート』(主演L〈エル〉役)は6月まで続くという、ミュージカル界で引っ張りだこという忙しいスケジュールの中、来日。そんなさなかに来日公演が開催され、何より驚いたのがミュージカル曲の数々を日本語で歌唱を披露してくれたことだった。
オープニングは、2012年の韓国初演以降、何度も演じてきた死の抽象概念を擬人化したトート役で出演した『エリザベート』のナンバーの中から、『闇が広がる(Japanese ver.)』と、『最後のダンス(Japanese ver.)』の2曲のステージからスタート。
『2022 FNS歌謡祭』でミュージカル界のプリンス井上芳雄と共演した際、日韓のトートの表現の違いが新鮮だったという、ジュンスが大絶賛された『闇が広がる(Japanese ver.)』。トートの妖艶さを全身からエネルギッシュに出し、シャウトしたり高笑いしながら表現していく姿が見事だった。
そして、圧巻なのが『最後のダンス(Japanese ver.)』。歌の深みを出しつつ妖艶なため息や高笑いなどを入れこみながらトートを表現するさまが印象的で、さらに切れ味抜群なダンスをダンサーと共に披露するのが、ジュンスならではである。初演の韓国での『エリザべート』を観に行ったが、その頃に比べ低音の響きに磨きがかかり、音域もさらに広がり進化したのではないかと感じた。踊り歌い慣れているジュンスの声はブレずに入り込み、一瞬にして引き込まれていく。圧巻という言葉しか出ないくらいすばらしい世界観を表現していく。トートを数多くの方が演じていると思うが、このジュンストートは必見である。
歌い終わると、日本語で挨拶。久しぶりの日本でのバラコン、そして横浜という地も感慨深げであった。
続いては韓国で2014年に初演されジュンスにとって初のブロードウェイミュージカルとなった『ドラキュラ』。『ドラキュラ』の楽曲は、ジュンスが個人的にも愛着があるというデュエット曲で、日本語での歌唱は初めてとなった美しいメロディで切ない愛の歌『Loving you keeps me alive(Japanese ver.)』。先ほどの妖艶で力強い『エリザべート』と比べて、しっとりと日本語をかみしめながら心を込めて歌い上げていく。
続いて、ドラマチックなメロディとダンスが印象的な『Life after life(Japanese ver.)』で、『ドラキュラ』の壮大で重厚な世界観に観客を一瞬で引き込んだ。
ジュンスが一旦はけた後、オーケストラとバンドとコーラスによるオルフの『カルミナ・ブラーナ(Carmina Burana):おお運命の女神よ』が演奏され、荘厳な音で観客の耳を楽しませた。
そして、王座に座ったジュンスがステージに再び登場!
現在L役として出演中の日本のコミックが原作のミュージカル『デスノート』から、冒頭の不適な微笑みからLらしさ全開の『ゲームの始まり(Japanese ver.)』へ。現在韓国でも公演中のものを、日本語バージョンで披露。韓国語と混乱しないで歌えるのが、またすごいし、公演中のものをそのまま披露すれば楽なのにわざわざ日本語で歌ってくれた心意気にも感動した。そして、「日本のミュージカル俳優の中で、日本でもミュージカルをやりたい」という気持ちの強さを感じた。これだけの日本語でのミュージカル曲を準備し披露したのが、ジュンスが夢を実現する一歩につながったに違いない。
さらに、自分では演じていない役柄、デスノートのもう1人の主人公・夜神月(ライト)のドラマチックな楽曲『デスノート』と、猫耳のカチューシャを着け、ヒロイン・弥海砂(ミサミサ)のキュートな魅力あふれる『I’m read』を披露。
ファンの間では、かわいらしいミサミサのダンスをジュンスが踊っているのを観たいという声も届いてか、全力で披露し、会場を沸かせた。
ミュージカルセクションでは、『エリザベート』『ドラキュラ』『デスノート』とそれぞれ違う世界観の役柄の雰囲気&シーンをそのまま切り出して披露し、様々な表現を巧みにこなすジュンスに改めて感嘆した。
そして、SNSで流行している“映り込みチャレンジ”や“ダンスチャレンジ”、“イントロクイズ”などジュンスの素顔が垣間見える映像の後は、ジュンスの原点であるアイドルの姿を楽しんでもらおうと準備したという、ダンスセクションへ。
バラコンではあるが、ダンスの上手いジュンスも、というファンの要望に応えてのセクション。
ジュンスが作詞作曲を手掛けている『Set Me Free』、ジュンスの兄JUNO(キム・ムヨン)と作詞を手がけた『Turn It Up』のダンスでは、タオルを回しながら会場の熱気を上げ、切れ味抜群のダンスで一気に盛り上げた。
ジュンスは「2曲続けていきなりダンスの曲を歌ったんですけど、今回のステージのタイトルは“バラード”なのに、何でいきなりダンスしちゃうのかという疑問があるかもしれないので、そこを説明すると、僕の本来の姿はアイドルだから~。日本でみんなと一緒にジャンプしながら遊べるようなステージが久しぶりなので、それにはダンスの曲がいいじゃないですか。で~、ちょっと踊っちゃいました!大丈夫ですか?」と伝えると、ファンからは歓喜の声が上がった。
(つづく)→次頁へ