韓国年間最長No.1記録を樹立、2023年韓国国内映画賞で25冠と最多受賞を記録した、史実に残された最大の謎に迫る<全感覚麻痺>サスペンス・スリラー『梟―フクロウ―』が、2月9日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国ロードショーとなります。
朝鮮王朝時代の記録物<仁祖実録>(1645年)に残された“怪奇の死”にまつわる歴史的な謎に、斬新なイマジネーションを加え誕生した『梟―フクロウ―』は、観客の無限の想像力を刺激し、2022年の韓国年間最長No.1記録を樹立。韓国エンターテイメント界の最高峰を決める百想芸術大賞で作品賞・新人監督賞・男性最優秀演技賞の3冠を受賞。11月に開催される第59回大鐘賞映画祭では主要部門すべてにノミネートされており、公開後も注目を集め続けている。
盲目の天才鍼医ギョンス(リュ・ジュンヨル)は、病の弟を救うため、誰にも言えない秘密を抱えながら宮廷で働いている。しかし、ある夜、王(ユ・ヘジン)の子の死を“目撃”し、恐ろしくも悍ましい真実に直面する。見えない男は、常闇に何を見たのか―?追われる身となった彼は、制御不能な狂気が迫るなか、昼夜に隠された謎を暴くために闇を駆ける―。
絶望までのタイムリミットは、朝日が昇るまで―。史実に残された最大の謎に迫る<全感覚麻痺>サスペンス・スリラー『梟―フクロウ―』。
この作品の監督を務めたアン・テジン監督が、日本での公開に先立ち、オンラインでの合同インタビュー(一部単独)に答えてくれた。
―この物語を発想されたきっかけを教えてください。
私が最初にこの提案を受けた時の内容が、視覚障害を抱えた主人公が宮廷に入って、何かを目撃する物語というものでした。その時に主人公の抱える病があることを初めて知ったんですが、非常に興味深いと思いました。盲目の主人公というのは、“目撃者スリラー”というジャンルに非常に適していると思ったからです。
―自身の初監督作品として、時代劇サスペンスを選択した理由をお聞かせください。
まさか自分が時代劇を撮ることになるとは思ってもいなかったんですが、今回の場合は、まず最初に作品のご提案をいただいたんです。先程も申し上げたように、最初にいただいた提案というのが、盲目の主人公が登場する目撃者スリラーということで、提案を受けてすぐに、目撃者スリラーのいくつかのシーンが思い浮かびました。その物語を膨らませるために、どんな時代の設定にしたらいいのか、どんな物語にしたらいいのかということを考えて探し始めて、仁祖(インジョ)と昭顕世子(ソヒョンセジャ)の物語にたどり着きました。
―『梟―フクロウ―』は、史実にイマジネーションを盛り込んだ作品ですが、監督はもともと歴史に興味があったのでしょうか?
実は全然興味がなかったんです(笑)。ところが、仁祖時代の物語を準備しながら、本当に久しぶりに歴史の本を読むことになって、あまりにも面白いので驚きました。『朝鮮王朝実録』という文献があるんですが、そこに書かれているのが、まるで今でいうとタブロイド的な内容で、その当時の歴史がディティールに渡って書かれているというところに非常に興味を持ちました。
―リュ・ジュンヨルさんとユ・ヘジンさんの共演は3度目だと思いますが、このお二人の実力派俳優をキャスティングした際のエピソード(お会いした時の印象、キャスティングされたことを聞いた時のお二人の反応など)をお聞かせください。
まずリュ・ジュンヨルさんですが、映画全体を見ている俳優だと思いました。俳優さんの場合は、普通は自分が1番で、自分の役だけを集中して見るということが多いんですが、彼の場合は、経験も豊富で賢明な方だと思いますので、そのせいか、自分の役だけではなく、映画全体を見ているな、という印象があって、お願いしました。恐らく彼は演出をやっても上手いのではないかと思っています。
そしてユ・ヘジンさんとは、以前から一緒に仕事をしていたので、よく知っている間柄です。今回『梟―フクロウ―』で久しぶりにお会いしたところ、もうすでに役が決まっていたので、仁祖に憑依していました(笑)。目も震えているような感じで、「あ、すでに憑依しているな」という印象でした。
―撮影中のエピソードを教えてください。
撮影初日のことをよく覚えています。初日に、リュ・ジュンヨルさんのひげを付けるか付けないか、ということがなかなか決まらず、それを決めなければ撮影に入ることができない状態でした。午前中ずっとひげを付けたり外したりを繰り返して、初日からそんな調子だったので、もしかしたら、このままだと私はクビになるのではないかと、ぶるぶる震えていたことを覚えています(笑)。
―監督のお気に入りのシーン、苦労したシーンを教えてください。
観客のみなさんもこのシーンが良かった、とよく言ってくださるシーンなんですが、主人公のギョンスが、最初に世子が死んでいく姿を目撃したシーンです。このシーンは、長く時間をかけて撮りましたし、精魂込めて撮って、苦労したシーンです。上手く撮れていないかもしれませんが、特に記憶に残っているシーンです。
―昼間の明るいシーンと真夜中の暗闇のシーンの対比がとても印象的でしたが、それぞれのシーンを演出する際に意識していたことはありますか?
映画の設定上、明かりが消えた後も観客がその場面を見えるようにしなければならなかったので、照明監督がとても苦労していました。撮影に入る前に、新しい装備をたくさん買って、最新の映像機器で、照明に長い時間をかけて撮影しました。
普通は、明るいシーンになると、観客のみなさんは安心すると思いますが、『梟―フクロウ―』では、むしろ明るいシーンで感じる恐怖感のようなものを表現しようと意識しました。
―明るさと暗さという光に関してだけでなく、音もとても印象的でしたが、音を演出する際に工夫したことはありますか?
盲目の主人公の映画ということで、視覚的な部分が重要でした。そしてまた同様の理由で聴覚的な部分も、際立たせたいと思いました。主人公が感じる視聴覚的経験を観客のみなさんが、そのまま感じてほしいという思いで、サウンドデザインにも気を配って作業しました。
―物語が進むにつれて、どんどん緊張感が高まっていきましたが、この緊張感を生み出すために、演出で工夫したことや重視していたことはありますか?
主人公の視線を追っていくことを重視しました。盲目の主人公がある真実を目撃しますが、ひとつその真実を見たことによって、またさらに別の真実も見てしまうという中で、主人公の緊張感、絶望、悩みといったことを観客が主人公と一緒になって感じてほしいという思いで、主人公の視点を追うような映画を作りました。
―緊張するシーンが続く中で、パク・ミョンフンさん演じるマンシクがほっとさせてくれましたが、パク・ミョンフンさんに対してはどのような演出をしましたか?
緊張感を与えるために必ず必要なのが、逆にその緊張感を緩めることです。その緊張感を緩めてくれる役割を今回はパク・ミョンフンさんが担ってくれました。
映画においては、初めて重要なシーンを目撃するまでランニングタイム少しあります。それまでに、観客のみなさんが退屈しないように、ユーモアの要素を盛り込みました。その役割をパク・ミョンフンさんがたくさんしてくださいました。
―タイトルの『梟―フクロウ―』ですが、作品を観ていくうちに、そのタイトルになった理由をなるほど、と思いました。このタイトルは最初から決めていたのでしょうか?
タイトルは、最初から決められていました。私が提案された時、すでに『梟―フクロウ―』というタイトルがありました。そのタイトルが、“目撃者スリラー”、そして“暗闇の中で真実を見る者”という意味合いと、よく合っていると思いましたので、このタイトルに忠実な作品を撮ろうと努力しました。
―日本で『梟―フクロウ―』が公開されると聞いた時はどのような気持ちでしたか?
まず日本の観客のみなさんが、どのように見てくださるのかが、いちばん気になりました。ほかの国で映画を上映するというのは、いつもそんなときめきと恐怖が同時に沸き上がってきます。それでも日本は韓国と歴史的に非常に密接な関係にある国ですよね。ですから、ほかの国の方より韓国の歴史劇に接しやすいのではないかという、そんな望みも持っています。
―『梟―フクロウ―』は、現時点で多くの映画賞を受賞していますが、この快挙について率直な思いをお聞かせください。また、この受賞によって、ご自身や周囲に変化はありましたか?
賞をいただいて、称賛もしていただくというのは、照れくさくはあるんですが、やはり気分がいいです。そして一緒に苦労してがんばってくれたスタッフや俳優さんたちに、お祝いの言葉もかけられますし、とてもうれしく思っています。そしてもうひとつは、一緒にお酒を飲む言い訳というか、理由ができたのも、またうれしいです(笑)。
変化についは、家族がいちばん喜んでくれました。母の笑顔をたくさん見られるようになりました。
―初監督作品ということで、ここまでの道のりで諦めることなく続けられたモチベーションはどこにあったのでしょうか?
家族ですね。私ではなく、家族が諦めませんでした(笑)。
―監督自身は、映画のどのような部分に魅了されていますか?
そうですね。自分が経験したことがないことを経験することができる、ほかの人の人生をのぞき見ることができる、という部分ではないでしょうか。
―次に監督が撮りたいと思っている構想やジャンルなどがあったら教えてください。
今現在、ソウルを舞台とした人工知能を使ったアクションスリラーを考えているところです。
―もし日本など、海外で映画を撮るとするならば、どのようなテーマで撮ってみたいですか?
以前、日本のサムライ映画が撮りたいなと思っていました。以前よく黒澤明監督の侍映画を観ていましたし、もともと西部劇も好きなんです。日本の侍映画と西部劇って共通点も多いですよね。ですから、恐らく日本で映画を撮ることになったら、歴史劇、サムライ映画を撮ってみたいです。
―日本の観客に向けてのメッセージをお願いします。
日本に行ったのは、かなり昔で、恐らく1990年代が最後だったと思いますが、その時日本の劇場で映画を2本観ました。サウンドがとても素晴らしかったので、驚いた記憶があります。その時から今までの間に、日本はどのように変わったのか、劇場の環境はどのように変わったのか、また観客のみなさんはどのように変わったのか、とても気になります。そして何より『梟―フクロウ―』をどのように観てくださるのか、気になります。ぜひ楽しんで観てくださることを願っています。
映画『梟―フクロウ―』は2月9日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国ロードショー。ぜひこのヒリヒリする緊張感を劇場で体験してほしい。
監督:アン・テジン
出演:リュ・ジュンヨル、ユ・ヘジン
2022年/韓国/118分/原題:올빼미/英題:THE NIGHT OWL/日本語字幕:根本理恵/G/配給:ショウゲート
(C) 2022 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & C-JES ENTERTAINMENT & CINEMA DAM DAM. All Rights Reserved.
公式HP:fukurou-movie.com
公式X:@showgate_youga
2024年2月9日(金)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国ロードショー