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2023年4月18日17時00分 火曜日 【単独インタビュー&動画】韓国映画『不思議の国の数学者』パク・ドンフン監督~独占コメント動画も!主演チェ・ミンシクの“オールド”ファンを公言!数学がダメになった理由とは!?「この作品を観て何か新しい可能性を見つける、そんな時間になってほしい」

4月28日(金)よりシネマート新宿ほかにて全国ロードショーとなる韓国映画『不思議の国の数学者』。
この作品は、『シュリ』『オールド・ボーイ』『新しき世界』など韓国映画界を代表する名優チェ・ミンシクの3年ぶりとなる復帰作で、チェ・ミンシク演じる脱北した天才数学者と挫折寸前の劣等生の思わぬ出会いがもたらす、一歩踏み出す勇気と希望に満ちた温かな感動作。
挫折寸前の劣等生役には、250倍の競争率を勝ち抜いたというキム・ドンフィが抜擢され、他のベテラン俳優にも引けを取らない存在感を放っている。
この見事なキャスティングと演出で心温まる作品を作り上げたパク・ドンフン監督が、4月某日、オンラインにて韓流Mpost単独インタビューに答えてくれた。

【単独インタビュー】『不思議の国の数学者』パク・ドンフン監督

―正解だけを出すのではなく、その過程を大事にして、質問内容を理解しながら答えを導くことが大切だということを伝える数学をモチーフに映画を作ろうと思った理由を教えてください。
シナリオをいただいた時から数学のお話だったんです。シナリオを見た時に、「えっ?数学の話なの?」と思って、もしかしたらちょっと退屈なんじゃないか、深刻な話でちょっと堅苦しい話になるんじゃないかと予想していたんですが、読んでみたら、決してそうではなく、心温まるお話で、ウイットに富んでいたり、本当に楽しめる、そしてまた感動もあるお話でしたので、「ああ、これは新しい映画になるんじゃないか」「何かやりがいを感じることができるだろう」と思って引き受けることにしました。
そして、シナリオを読んだ時、ある場面が頭の中に浮かびました。それはある悩みを抱えている子供が出てくる場面なんですが、ある目標を持っていた子が、その目標を達成できずに落ち込んでいるところに大人が現れるんです。その大人は親かもしれないし、知っている大人かもしれないんですけど、その子供の前に大人が現れて、最初から最後まで途中で遮ることなく、休むことなく、本当に優しく耳を傾けて、「いや、それは君が努力が足りないからだ」というふうに叱ったりすることもなく、お話を全部聞いてあげる大人が登場するという場面だったんです。非常に礼儀正しい場面というか、とても真っすぐな実直なイメージが頭の中に浮かんだんです。それもあって、ぜひこの作品を演出してみたいと思って引き受けることに決めました。

―監督はもともと数学が得意だったのでしょうか?
数学は、中学を卒業するまではすごく楽しかったんです。映画の中にも出てくる三角関数を解いたり、ゲーム感覚で数学をやっていて楽しんでいたんですが、高校に入ってから完全ダメになりました(笑)。絶望してしまったというか、数学に限らず、すべての科目がダメになってしまいました(笑)。

―韓国の名優チェ・ミンシクさんが演じたことで、映画により深みが出ていましたが、数学者役にチェ・ミンシクさんをキャスティングしようと思った理由を教えてください。
実は私は90年代からチェ・ミンシクさんの“オールド”ファンで、今も熱烈なファンなんです。以前の作品もたくさん観てきました。『オールド・ボーイ』の役だったり、それから『バトル・オーシャン 海上決戦』のイ・スンシン将軍の役だったり、『悪魔を見た』の悪人の役だったり、本当に様々な姿を観てきたんですが、そんな彼が高校の警備員のユニフォームを着て、ちょっとみすぼらしい格好で登場しますよね。そして高校生と出会って、数学について話をする、しかも隠れたような場所で、ひっそりとした空間で、高校生と交流しているという物語を考えた時に、これはチェ・ミンシクさんが演じることで、非常に興味深い、注目すべきイメージが出来上がるのではないかと思って出演を提案したところ、幸い快く引き受けてくださったので、本当に感謝しています。今でもずっと感謝しています。

―挫折寸前の劣等生役に250倍の競争率を勝ち抜いて抜擢されたキム・ドンフィさんを選んだ理由を教えてください。
オーディションをずっとしていたのですが、彼は本当に最後の頃に出会った俳優さんなんです。つまり、それ以前にお会いした方の中には、私が思い描いているジウ像に合った俳優さんがいなかったということですよね。
オーディションの時は、もともと指定された台本で映画の中の一場面を演じてもらったんですが、彼が入ってきた時には、私の隣りにチェ・ミンシクさんも一緒にいたんです。そんな中でやり取りをしながらオーディションを進めていったのですが、入ってきた時の彼を見て、清らかな、真っすぐな印象を受けました。そして、指定された台本があるにもかかわらず、そのセリフを直してきたんです。それはめったにないことなので、理由を聞いたところ、落ち着いて一つひとつ、どうして直してきたのかについて論理的に説明するんです。普通だったら緊張するじゃないですか。それなのに、とつとつとゆっくりと一つひとつ、自分のペースを見失わずに説明している姿を目の当たりにしたんです。たぶん緊張していたと思うんですけど、そんな中でも最後まできちんと説明をしてくれました。そういった姿はジウ役には必要だと思って、彼を選ぶことになったんです。そして、彼の姿を見て、冒険家の気質も垣間見えるような気がしたので、私が思い描いているジウ像に近いと思って、彼を選びました。

―撮影中、監督がチェ・ミンシクさん、キム・ドンフィさんのことをすごいな、面白いな、と感じたエピソードがありましたら、教えてください。
実はお話できるようなエピソードはないんですが、個人的には「質問が正しくなければ、正しい答えが出ない」というセリフが印象に残っています。というのは、『オールド・ボーイ』でもちょっと似たようなセリフがあったんです。チェ・ミンシクさんが演じたのはオ・デスですが、ユ・ジテさんが演じた敵役のイ・ウジンが、オ・デスに対して「間違った質問ばかりするから、正しい答えが出るはずないじゃないか」というようなシーンがあって、それを思い出して、「わぁ、これちょっと似てるんじゃないかな」と思ったのは覚えています。
あと、エピソードではないんですが、私がモニターのところに座っていた時、後ろを見ると、チェ・ミンシクさんと若い俳優さんたちもいたんです。その様子が、同僚の俳優として一緒にいるという感じではなく、若い俳優さんたちは「わぁ、芸能人だ」「大スターだ」「『オールド・ボーイ』のオ・デスだ」というまなざしでチェ・ミンシクさんを見ていて、そのまなざしを見るのが面白かったですし、私も人のことは言えなくて、若い俳優さんたちと同じ気持ちでした(笑)。

―数学の美しさを証明するために円周率から作られた“πソング”が、とても美しく、こんな発想があるんだと感心しました。ある意味、見る角度を変えるとこんな広がりもあるんだと教えられている部分でもあり、とても素敵なシーンでしたが、この音楽と数学をひも付けた表現はどのように生まれたのですか?
このシーンはもともとシナリオにあったんですが、きっとこのシーンを観たら、観客のみなさんは非常に深い快感を覚えてくれるだろうと判断して、撮影前からこのように作ろうと思っていました。とにかく“πソング”がテーマなので、数学が空気の波動を伝って耳に入ってくる、体に入ってくるということをコンセプトにして、もともとシナリオにあったものよりも拡張して作っています。もともとは、この“πソング”を演奏する場所がB103のアジトではなくて、音楽室に移動して演奏するという設定でした。でも、アジトがメインの舞台なので、アジトで演奏した方がもっと大きな快感が得られるのではないかと判断して、アジトで撮影することを決めました。そしてこのシーンは、あくまでも“πソング”だけで勝負しなければならないと思いました。もともとの演出では、10秒から20秒ぐらいピアノで“πソング”を演奏して、途中からOSTが被ってくるというよくある設定で、感動をどんどん高めて盛り上げるという計画でしたが、撮影現場で全曲フルで聴いて、演奏している演技を見て、完全にピアノの曲だけで最初から最後までいこうと判断して、このようなシーンが出来上がりました。
個人的には、この作品中、至らなくて恥ずかしいなと思うような場面もあるんですが、このシーンに限っては自負心を持っています。数学は、こんなふうに常に私たちと同じ空間で共存しているということを体験してもらえるシーンだったと思います。私にとっても、とてもやりがいのあるシーンでした。

―バッハの『無伴奏チェロ組曲 第1番 プレリュード』が映画にとてもなじんでいましたが、この曲を組み入れた理由を教えてください。
この曲も、もともとシナリオにあって、それに私の解釈を加えて拡張しました。バッハは実は数学者の一面があったと言われていて、この『無伴奏チェロ組曲 第1番 プレリュード』と非常に似ている曲として、『平均律クラヴィーア』という曲があります。この曲は『無伴奏チェロ組曲 第1番 プレリュード』が作られる前、ピタゴラスが作った音階を使用して作られていて、『平均律クラヴィーア』が作られる前までは、音楽においては限界があると言われていたものを、その音階を使ったことによって限界を突破できたそうです。それ以来、作曲する上で、とても自由になったと言われていますが、これは私が音楽論を述べているのではなく、資料調査をした時に知りました。ですから、数学者としての一面もあったバッハが作曲した曲を使うということで、もともとシナリオにはあったものですが、更にそれを拡張しようと思って、シナリオにあったよりも、もっと長く使って、原曲をできる限り生かすようにしました。
そして今、お話しながら気付いたんですが、原曲を長く使うということは、その分、チェ・ミンシクさんの顔が長く映ることになりますよね。ですから、長く見せても、チェ・ミンシクさんの顔が責任を取ってくれるという、そんな思いもあって、長く使うことにしました。

―日本で観られる方にメッセージをお願いします。
本当に辛くて苦しくて何かを諦めたくなる瞬間というのは、やはり誰にでもあると思うんです。そんなふうに諦めたいと思った瞬間でさえも、一度立ち止まって周りを見渡してみると、何か可能性を見いだせるかもしれないと思うんです。ですから、この作品を観て何か新しい可能性を見つける、そんな時間になってほしいということを伝えたいです。
そして、最後のインタビューなので、勇気を出してお話ししますね。さきほど、数学の質問をしてくださった時に、それ以前までは楽しんでいたけれど、高校生の時にダメになったと言ったんですが、そのダメになった理由について、ちょっと勇気を持ってお話しすると、ひとつが勉強せずに映画ばっかり観るようになってしまったこと。それがまずひとつの理由で、もうひとつが80年代にチェッカーズにハマってしまいまして、全く勉強しなくなってしまったというのも原因のひとつです(笑)。
『I Love you, SAYONARA』です(笑)。
(完)

とても気さくな雰囲気のパク・ドンフン監督。順序立てて丁寧に質問に答えてくれる姿は、今回の映画のモチーフでもある“質問内容を理解しながら答えを導くことが大切だということを伝える数学”にも通ずるものがあった。
人それぞれ、立場や抱えている悩みは違えど、そんな人達が寄り添うことで、新たな可能性に向かっていけるという温かな勇気をもらえる映画『不思議の国の数学者』。劇場で“πソング”を聴いて、耳から美しい数学を体験してほしい。

『不思議の国の数学者』
<STORY>
学問と思想の自由を求めて脱北した天才数学者ハクソン。彼は自分の正体を隠したまま、上位1%の英才が集まる名門私立高校の夜間警備員として生きている。冷たく不愛想なため学生たちから避けられているハクソンはある日、数学が苦手なジウに数学を教えてほしいとせがまれる。正解だけをよしとする世の中でさまよっていたジウに問題を解く「過程」の大切さを教える中で、ハクソンは予期せぬ人生の転換点を迎えることとなる。

監督:パク・ドンフン
出演:チェ・ミンシク、キム・ドンフィ、パク・ビョンウン、パク・ヘジュン、チョ・ユンソ
2022年/韓国/117分/シネマスコープ/DCP5.1ch/日本語字幕:朴澤蓉子/原題:이상한 나라의 수학자/英題:IN OUR PRIME
(C) 2022 showbox and JOYRABBIT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
配給:クロックワークス klockworx-asia.com/fushigi/
4月28日(金)より、シネマート新宿ほか全国ロードショー

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